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「​乙嫁語り」の衣装展

 2025年幕開けは森薫著「乙嫁語り」にゆかりのシルクロードの伝統衣装を展示してみました。この地域のコレクションはトルクメニスタンのチュルピーという婚礼衣装から始まりました。見事な刺繍と藍染更紗の裏地に魅せられたのが始まりでした。
​ 今回はシルクロードに伝わる伝統衣装のデティールに注目してその魅力に迫りたいと思っています。

 2025年1月15日よりネットギャラリーにて公開 

GALLERY 

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​乙嫁衣装のデティール

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 トルクメンのテケ族婚礼衣装”チュルピー”です。鉤とチューリップの模様を精緻に花嫁自らが時間をいとわず刺したものです。ボタンホールステッチの変形のケシデといわれる技法です。裏面の生命樹模様はあらかじめ媒染剤に浸した布に小麦粉糊を木版で印捺して模様を作り出しています。インド秘伝の媒染法によるそめものですが、この地域で染められたものと聞いています。

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ヒヴァを擁するウズベキスタン・ホラズム地方のコート“チャパン”です。生命樹のアドラス絣とロシア製銅版更紗の間に綿をいれ細かくミシンでキルティングがされています。ロシア革命後のヒヴァ・ハーン国滅亡とともに失われた伝統染織技法です。ミシンは19世紀には既に使用されていましたので物語の時代にまで遡る衣装だと思っています。

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ソビエト政権下になるまでは都市の女性や裕福な農村の女性は外出の際に被衣”パランジャ”を被り、防寒、防暑、埃よけにしていたのでこのような被衣はウズベキスタン周辺の広範な地域で見らたようです。腕を通さない長い偽袖の先端の組みひもとタッセルに見どころがあり後ろ姿が強く印象付けられます。​

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ブハラで作られたベルト”カマル“は婚礼時に花嫁の後頭部飾りとして用いられ後にバックルを付けて男性用飾りベルトとして用いられたものです。全面に魔除けの「蛇」、その胴体には吉祥文様が隙間なく刺繍されています。裏布は天然染料で糸を染めた上質なアドラス絣織です。

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 20世紀初頭のブハラの男性用コート”ハラト”です。括り・染め・織り・仕立てのそれぞれの熟練職人による盛装衣装です。経絣の太陽紋(ドゥイラ・グル)羊の角(ラムズホーン)が、天然染料により表現され、裏地はロシア銅板更紗、また縁取りは組紐を編みつつ同時に縫い付けていくという手の込んだものです。

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 カラカルパク族は遊牧騎馬民族国家を築いたスキタイ人の末裔ともいわれイスラム化以前から豊かな伝統文化を培ってきました。被衣”キメシュク”は上質な“アドラス絣”とマノート地に伝統の守護文様が花嫁とその家族の手により数年掛かりで刺繍された嫁入りの持参品です。作品中の薄幸の乙嫁タラスの着用していたものとよく似ています。きっとこの物語着想に貢献したものと思います。

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 ウズベキスタンの顔布”チャチパン”は腰が強く弾力性がある馬の尻毛やたてがみで作られています。ロシア革命以前、イスラム教徒の女性が全身を覆い隠して外出した時に使用していたものです。偶像崇拝をさけるイスラム教の伝統においてこのチャチパンの具象的な花柄刺繍は珍しいものと思っています。​

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今回の展示の中で一番古い19世紀に遡るペルシャの衣装です。先が尖った細みの袖、切れ込みの入った脇、絞ったウエストの左右の耳状パーツ、V字に大きく開いた胸元のデザインが特徴のこの上着はペルシャ・カージャール朝期(1796~1921)の貴族女性が着用した盛装衣装です。

参考資料

イオ・ライフマーケットHP  

​西アジア・中央アジアの民族服飾 文化出版局 

世界織物文化図鑑 ジョン・ギロウ著

   

 

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